さっきから心臓が速く、力強く、高鳴って。


衝撃も、戸惑いも、消えてはくれなくて。



それでも、気にしていないフリを続けた。



気にしたって無駄だ。


だって、きっと。

あの子とは、もう会えない。



チクリ。

胸の裏側にトゲが刺さったみたいで、痛い。


……って、この痛みは、何なんだ。なんで、痛いんだ。



いろいろおかしくて、違和感しかない。



息苦しくなって、ネクタイを緩める。ブレザー型の制服が、いやに窮屈だった。


気づいたら、先ほどまでの空腹感は喪失していた。






「名前、聞けばよかったかな……」


「何の話?」



昼食にカレーを食べ終え、劇を観ようと体育館に移動する。


小さな小さな独白は、隣にいた遥陽に聞かれてしまったらしい。「ん?」と俺を窺っている。



「え、あ、いや……」