【着信: 恭さま】


画面上に見慣れた名前が表示された。

トクン……と心臓がはねる。



(咲間――……!)



嫌いな――……苦手なやつだったはずなのに、こうして名前を見ると安心するのはなぜだろう。

幸い、田中くんにこの着信音は聞こえてないみたいだ。


(あと少し……っ、お願い届いて)


小指を少しずつ近づけていく。

予想以上にきつく縛られているため、少し動くだけでも痛い。


(もうむり……これ以上は届かない)


諦めかけていたとき、静止画面が通話画面に切り替わった。


“あ。おい、お前今どこだよ ”


「さ、くま……咲間――……っ!」


涙がぽろぽろ、頬を伝う。