小学5年生の時、愛と愛のお母さんが、俺の家に来たことがあった。


おふくろはリビングのテーブルに最中が9個入った器を置いていた。


「この最中、美味しいって有名なの!食べて」

おふくろがそう言った後、俺と愛と愛のお母さんは最中を1つ食べた。…おふくろも食べた。


暫く、談笑した後

「あっ!大前さんに見せたいものがあるの!!こっち来て」


「なに〜?」

おふくろは愛のお母さんを自分の部屋に連れていった。


リビングには俺と愛の2人だけになった。


ゴク

俺は暖かい緑茶を少し飲んだ。

そして、最中を食べようと最中が入っていた器を見た。……残り1個だった。

俺は最後の1個を食べようと最中を取ろうとした時


愛が俺より先に最中を掴んだ。俺は愛の手を最中と間違えて触った。


「あ……」

俺は思わず声を出した。

「こ…この最中は愛のだよ」


愛は最中を手に取った。……少し、顔が赤くなっていたように思った。


「俺、1個しか食べてないんだ!……愛は何個食べた?」


「……5個だよ……」

「食べすぎ!!俺にくれよ?」

「い〜や!!愛は最中好きなんだもん!」

この時の愛の顔は憎たらしかった。


「最中返せよ〜」

俺は立ち上がり、愛から最中を取り上げようとした。
その時、愛の手や腕に触れた。

「あ……」

愛は最初、俺に手を触れた時よりも愛の顔は赤かった。

俺はなんで顔が赤かったかわからなかった。

「た……たかちゃん!は……半分個しよ?ねぇ?いいでしょ?」


「……わ…わかったよ」

この時の愛の顔が可愛く思えて、思わず愛の言う通りにした。


すると
愛は最中を半分食べた。


「はい、たかちゃん!半分あげる?」


「愛……なんで最中、割らずに半分食べた?」


「あっ!割ったら、ポロポロ溢れると思ったの!!だから、愛が半分食べたの!!」

「……そうか!」

俺は愛から半分の最中を受け取り、半分愛が食べた最中を一口で食べた。


「……美味しい?」


「美味しいよ」

「よかった〜」

……この時、俺は愛のことを物凄くわがままな女の子だと思った。

……今となってはいい思い出だ。


……愛は次の日もそのまた次の日もいなかった。


結局、愛と会ったのは、1週間の内、月曜日だけだった。