こうして大体こんな感じで僕は毎日学校に行っている、確かに兄弟の居ない僕にとって和美の存在は多少鬱陶しいものの、こいつのお蔭で小さい頃から寂しいと感じた事は無い。ただ、あまりに近くに居る為、所謂普通の「女の子」というような感覚では無かった。
大体小さい頃から兄妹のように育ったのだ、小さい頃は一緒にお風呂にも入った事もあったし、それこそ和美の裸なんて何回も見ている。
そう言えば親同士がふざけて撮った涎塗れで二人がキスしている写真なんてのもある、勿論和美も同じ物を持っているだろうが、それを見てどう思っているかは知らない。
もっとも何時からかお互いに性別が違う事が判りそんな事も無くなっていた。そう考えるとあの時よりは胸も膨らんだ和美と昔一緒にお風呂に入っていたと思うと少しは照れる。
ただ正直言って和美に対する僕の気持ちは小さな頃から少しも変わっていなかった。たまに当の和美は僕の事をどう思っているのか聞きたい時もあったが、家が隣という事もあってそれは絶対に両想いになるという確信が無いと聞けない事だった。
家から学校迄は自転車で約三十分、田舎町なので他にバスという通学手段はあるものの何時来るか判らないバスを待つよりは自転車で通学する方が早いし、時間的にも確実だ。
そして自転車に乗れない和美を後ろに乗せていつも僕は学校に行く、和美が毎朝僕の家に来るのはその為だ。
「今日さ、うちのお母さんが夕飯食べにおいでって言ってたよ」
自転車の後ろから少し覗き込むように和美がそう言った。
「何で?」
「お爺ちゃんが田舎から色々送ってくれたからうちのお母さんが食べに来いだって」
「ふ~ん、判った」
自転車を漕ぎながら頬に当たる初夏の風が気持ち良い。片親で働いている舞ちゃんを大変だと思ったのか、隣に住む和美の両親は僕を本当の子供のように可愛がってくれた。
それこそ夕飯なんかもよく食べさせてくれた。僕は殆ど和美の家で大きくなったと言っても過言ではない。
特に和美の父親は男の子が欲しかったせいか、小さい頃は僕とよくキャッチボールをしてくれた。そして大きくなったら必ずプロ野球の選手になれと言うのが口癖だった。
高校生活はそれなりに楽しい、特に嫌な奴も居なかったし毎日普通に勉強をして昼飯を食べそして普通に家に帰る。
もっとも帰りも余程の事が無い限り来た時と同じように僕は和美を乗せて帰る。自転車には乗れないくせに和美は生意気にもテニス部に入っている。だからその練習が終わるのを大体毎日図書室で勉強をしながら待っていた。
一応僕も科学クラブに入っていたが、運動部と違って毎日部活があるわけではなかった。だからクラブが無い時はたいてい図書室で和美を待つのが習慣になっていた。
勿論そんな事をしていたらクラスの奴らに付き合っているだのと言われそうだが、田舎の学校という事もあり中学から一緒の奴らが多かったので皆も僕達の家が隣同士だという事をよく判っていた。