……なんてことだろう。
わたしはなんと、あの大熊くんの腕に、抱きかかえられていたのだ。
俗に言う、お姫様抱っこ、というかたちで。
「〜っ、あ、あのっ」
「俺が連れていきます」
再び断言した、大熊くん。
威圧感あふれるその声に、さわがしかった体育館内は、一瞬で静まり返った。
…う、ウソでしょ?先生……!!
助けを求めて、先生に視線をおくる。
けれど先生は、引きつった笑みを浮かべて、道を開けるように後ずさった。
「あ……ああ。じゃあ、よろしくな、大熊」
「〜っ!?」
……じゃ、じゃあよろしくな、じゃないです先生!!
ちょっと待って、だれか助けて……!!
そんな心の叫びは、あぜんとしているクラスメートたちに、届くはずもなく。
わたしはガチガチにかたまったまま、大熊くんの腕にしっかりと抱えられ、体育館をあとにするしかなかった。