「あ……あの……」
「……っ、」
声をかけた瞬間、大熊くんは、わたしからふいっと顔をそむけた。
そして、そのまま荒々しく自分のカバンをつかみ、ずかずかと、教室を出て行ってしまった。
ダン、ダン、ダン!!
わたしのものよりずっと重ための、叩きつけるような足音が、去っていく。
「………っ、」
……どうしよう。
からだから、さあっと血の気が引いていくのを感じ、わたしはその場にへたりこんだ。
……ど……どうしよう!?怒らせた!!
絶対怒らせちゃったよ……!!
恐怖のあまり、動けなくなったわたしは、しばらく教室から出られなくって。
だから。
「うわ…やっべぇ……」
教室のそと。
少し進んだ、廊下の曲がり角。
大熊くんが顔を真っ赤にしていたことなんて、知るよしもなかった。