「そうだよ。

千花は俺がずっと好きだった人。

けど、千花は兄貴に夢中で、どんなに思ったって叶わなかった」


「だから、寮に入ったんだね」


「まぁね、新婚さんの邪魔できないし。

それにさ、兄貴も千花も俺の気持ちに気づいてたから。

さすがに一緒には暮らせないっしょ」

結城くんは笑ってるけど、その笑顔はすごく切なくて、私の胸はぎゅうっと苦しくなった。


あぁ、そうか。

そうなんだ。

私は結城くんのことが・・・


「ま、桃子センセイには関係ないじゃん。 なんで、千花のことなんか聞くんだよ? そんなに、俺に興味ある?」

結城くんは茶化すように言う。

いつも通りの結城くんだけど、今の私には意地悪だ。

「そうだね。 私には関係ない。
ただの興味本位だった。ごめんね」

自分でもびっくりするくらい硬い声だった。

やだな、何でこんな感じ悪い言い方しちゃうんだろう。


「 ふーん。じゃ、小鳥遊は?
あいつには興味あるの?」

「えぇ!? なんで、小鳥遊先生が出てくるのよ」

「見かけたんだよ、この間。 二人でドライブなんかしてさ。
男はダメな癖に、小鳥遊は嫌いじゃないんだね」

結城くんも私に負けないくらい嫌な言い方・・・。


「あれは送ってもらっただけよ。

小鳥遊先生のことは尊敬してて、もちろん嫌いじゃないけど・・・」

「じゃ、小鳥遊と付き合ってみたら?
俺とリハビリするよりずっといいかもね」

冷たい声、冷たい瞳。

こんな結城くんは初めて見た。