「好きだったの? そいつのこと」

「ううん、好きじゃなかった。

けど、好きになりたかった」


「ならなくて正解だったじゃん。
そんな、くだらない男。

浮気する男が世の中にいっぱいいたってさ、桃子センセイのお父さんは一人じゃん。たった一人の大切な人に裏切られたら、傷つくに決まってる。

その程度の想像力もない男、桃子センセイには似合わないよ」


うっかり涙が出そうになった。
あの頃の私が欲しかった言葉だったから。

私、お父さんが大好きだった。
信じてたんだよ。


「・・・ありがとう」


「けどまぁ、その最低男の気持ちもちょっとわかるよ。

好きな人に触れたいって俺も思うから」

結城くんは少し照れたような顔で笑った。


好きな人・・・・

彼女のことを考えているのかな・・・




「さっきの綺麗な人、彼女?」