私は立ち上がって、切っていたイバラを見つめながら溜め息をついた。
「死後硬直とかなのかな?まぁ理由がなんだろうと、穴を作るのは無理だね」
赤野も立ち上がり、両膝に付いた土や小さな葉を手の甲で払い落として顔を上げた。
「反対側も確認してみよ?バケモノが居なくなったから先に進めるかも」
赤野はボロボロになった刃をハンカチで丁寧に包み、差し込んでいたウエストに戻した。
「役に立つとは思えないけど……」
「念の為だよ」
弾切れの拳銃は爆発のせいで、どこかへ飛ばされてしまい手元には無い。
役立たずのナイフなど荷物でしかないと思ったが、切っ先は鋭いままなので護身用くらいにはなるかもしれない。
私たちは巨大な黒バラが吹き飛んだ屋敷の右側に向かった。