後ろから見ていた私は赤野の隣にしゃがみ込み、彼が握っているナイフを覗き込む。

「これじゃ使い物にならないわね」

ナイフの刃はエッジと呼ばれる物を切る部分が、ギザギザになっていた。

これではパンすら切れないだろう。

「……でもなんで切れないのかしら」

赤野は私を助ける時に、イバラを切り落としている。

だが、目の前のイバラは切っていた跡が残っているだけだった。

「前と硬さが違うんだ……」

眉間にシワを寄せた赤野は、イバラのトゲの生えていない部分を指先で突く。

「バケモノは死んだのに、このイバラはまだ生きてるのかしら……」