「よじ登れるかな?」

赤野は人一人の隙間も無いイバラで出来た高い壁を見上げる。

「無理よ。トゲが釘みたいだわ」

太いイバラには大小様々なトゲが密集していて、素手で掴めば皮膚を突き破って血だらけになるのは目に見えている。

「じゃぁ、ナイフでイバラを切って穴を作ろ?這って出られるくらいの」

赤野はピンク色のハンカチに包まれたナイフを取り出した。

「そうね、そうしましょう」

ナイフの存在を忘れていた私は、赤野の案に同意する。

赤野は地面に膝をつき、太いイバラに銀色に輝くナイフの刃を宛がう。

ナイフを前後に動かすが、手応えの無い感覚に、赤野は手を止めた。