私の腕を掴んでいる赤野の手首を掴み返し、巨大な黒バラの残骸に背を向けて歩き出す。

「紙を回収するのに屋敷の中を歩き回ったんでしょ?甲冑は大丈夫だったの?」

不服そうな顔の赤野に、何か言われる前に話題を振る。

私は赤野の手首を放した。

私の意図が解った様で、赤野は小さく溜め息を漏らしてから口を開いた。

「屋敷の中は静かだったよ……甲冑が居なかったんだ」

私たちは進行方向に顔を向けながら会話を続ける。

「居なかったって……足音も聞こえなかったの?」

「そう。廊下が安全だったよ」

何処からか現れた甲冑が見回りをしていた廊下に、危険が無いのは不思議だ。