こんな事をしても二宮は返って来るわけがないし、私は胃袋から脱出することは出来ない。

それでも私は憎悪を染み込ませる様に足首を捻り続けた。

すると火災現場に漂う人体が焼け焦げた様な臭いが、血生臭さに慣れた鼻に入り込んできた。

「……なに?」

瞬間的に臭いのする足元を照らすと、黒バラを磨り潰している右足の下から臭いと共に灰色の煙が立ち上っていた。

「何よ、これ……」

ヌルヌルとした液体のせいで、火が出るほどの摩擦が起きたとは思えない。

右足をどかして足元にライトを当てながらしゃがみ込む。

すると黒バラの下から灰色の煙は出ていた。

私が磨り潰して花びらが散らばった黒バラは、胃袋と接触している所から、ふつふつと小さな泡を立てながら焦げていく。