「わかりました、見にいってきます」

春雪は私にトングを渡すと、別荘に向かって歩き出した。

春雪、行ってほしくないよ。

ずっとそばにいる、って言ったじゃない。

こんな地獄のようなところに、一人にしないで。

焼きあがった食材をとりわけていると、あきは姉ちゃんが春雪の腕につかまりながらご機嫌で戻ってきた。

「ああ、あきは。やっと機嫌が直ったのね」

「ええ、ちょっとね、ハルユキ?」

「あ、うん」

春雪は気のない返事。

そしてなんだかうつろな目。

寂しさがにじみ出ている。

「じゃあ、バーベキュー、始めましょうか」

母親が言った。

「さ、どんどん焼き上がってるわよ」

かずは姉ちゃんがトングでひとつひとつ皿に取り分けていく。

私は、どうせ私の皿には乗せてくれないのだろうと思い、割り箸で肉をつまんだ。

「あら、いろは。自分でとるなんてやめなさい。私が取ってあげる」

あきは姉ちゃんがトングで肉をどんどん皿に乗せていく。

どういう風の吹き回しだろう。

今までこんなこと、ありえなかったのに。

「いろはは成長期なんだから、いっぱい食べなさい」