春雪の指が私の言葉を紡いでいく。

私の口からはすらすらと言葉が出た。

寂しさや、苦しさ、孤独感。

愛情飢餓感、生きている理由。

真咲さんは何度もうなずいて聞いてくれた。

そして、そのたびに指先が動き、言葉に変わっていく。


どれくらい、そういう風に話しただろう。

もう窓の外は暗くなっていた。

そろそろ、帰ろうか、と春雪が言うまでに私たちはすっかり打ち解けた。
帰り際、真咲さんの指先が動いた。

「あ、な、た、は、ひ、と、り、じゃ、な、い、の」

私はこらえていた涙が溢れてきた。

一生懸命涙を拭うと、また指が動く。

「あ、い、は、ね、み、え、な、い、け、ど、た、し、か、に、あ、る」
うんうん、と頭を振る。
「あ、な、た、と、しゅ、ん、せ、つ、の、あ、い、だ、に、も、ね」

私は春雪のTシャツの裾をぎゅっと握った。

「だ、か、ら、し、ん、じ、て。あ、い、に、ぜ、つ、ぼ、う、し、な、い、で」

私はその場にしゃがみこんで泣き崩れた。


窓の外で木がそよぐ音がした。

風が出てきたようだ。

もうすぐ、ここにも夏が来ることを暗示しているような風だった。