ひどいよ、かずは姉ちゃん…。

私だって他の家に生まれたかった。

もっと、愛のある家族に。

涙が目の表面に薄い膜を作る。

それでも泣かないように、泣かないように、と心の中で唱えた。


車で高速を走り、2時間ほどで貸別荘のあるキャンプ場についた。

私はさっきかずは姉ちゃんが言った言葉が忘れられなかった。

「ナンデウチノカゾクナンダカワカンナイ」

暗号のようにも、外国の言葉のようにも聞こえた。

でも暗号でも外国語でもない、紛れもなく、私に投げかけられた言葉。

苦しい、苦しいよ。

なんで私を愛してくれないの?

みんなどうして私をいらない子なんて言うの?

胃のほうから何かがこみ上げてくる感覚を覚えた。

同時に頭がくらくらと回るような感覚。

「…ろはっ!!」

遠くで誰かが私を呼ぶ声がしたけれど、霞の奥に消えていった。


目を覚ますと、大きな木の下のハンモックの中でさなぎのように揺れていた。

私は何がなんだかわからずに、ただ辺りをキョロキョロ。

私たちの借りている貸別荘のそばではないことは確かだ。

額に手を当てると、冷たいタオルがのっかっていた。

「あら、気がついたの?」