家族から無視されるのなんて慣れっこだよ。

私は母親が持たせるバーベキュー用の食材を車の後ろに積んだ。

全て積み終わって、さぁ、出かけよう、という時になって、

「あら、そういえば私、かぎ締めたかしら」

と母親が言い出す。

「全く、お母さんはドジなんだから」

父親が軽くため息。

「ちょっと、いろは。見てきなさいよ」

やっぱり、思ったとおりだ。

私はいわれたとおり、車から降りて確認することにした。

かぎはちゃんと締まっていて、ただ鍵穴にかぎがささったままになっていた。

お母さん、ほんとにドジだな。

ため息をつくと、かぎを引き抜く。

車に乗ろうと、振り返ると、そこには春雪が立っていた。

「あれ、ハル。どうしたの」

最近私は春雪のことをハルと呼んでいる。

春雪は少しためらいがちに、

「トイレに行く、って言って車から抜けてきた」
私は、そう、とつぶやくと、

「やっぱり、私は行きたくない。みんなだけで行って」

春雪は悲しそうに眉根を寄せ、

「いろは、さっきはごめん。何の手伝いも出来なくて。あきはが腕をつかんで離そうとしないんだ」

「わかってるよ、ハルは悪くない」