「紅ちゃん。いろはのこと、これからも親友だと思ってやって欲しい」

「はい、井上先生もいろはのこと、守ってあげてくださいね」

「ああ」

「私、このことは誰にも言わないから。こう見えても口、堅いし」

紅のこう見えても、という言葉に私と春雪は思わず吹き出した。

つられて紅も笑う。

それからふっと真顔になって、

「でも先生、本当に好きでもない人と、結婚するの」

「ああ、一応結婚式の日取りとかは未定だし。いろはをそばで守ってやりたいから」

「いろはは、先生と気持ちが通じ合ってるのに、恋人になれなくてもいいの」

「私も考えたんだけど、春雪がそばにいてくれるなら、それ以上のことはもう望まないよ」

「そう…」

紅は納得したように、頭を縦に振る。

「まぁ、このことは3人だけの秘密にしておこう」

私と紅を交互に見て、春雪は言った。

暗黙の了解、といった感じの空気が流れた。

私たちはその後、夜の10時近くまで教室で話し込んでいた。