お互いの気持ちを確かめ合った私と春雪は、再びタクシーに乗って私たちの住む町まで戻った。

私は紅に電話した。

もちろん、春雪も一緒だ。

私はあらかじめ春雪と一緒にいることを話して、学校のそばのファミレスから、一番一緒にいても怪しまれない学校に戻った。

途中のコンビニでペットボトルのお茶を買った。
紅はなぜ私と春雪が一緒に来たのかは尋ねなかった。


真っ暗な教室に私と紅と春雪はいた。

電気をつけると、一気に教室が明るくなった。

手書きの時間割表。

大学の進学案内のポスター。

普段あまり気にもとめないものが、こんなときは目につくものだ。

私たちが歩くと、リノリウムの床がキュッキュッと鳴いているような音を立てた。

私たち3人は一つの机を囲み、私と春雪の出会いから、私と家族の関係、そして春雪の婚約者が私の姉であること、でもその婚約は私を助けるためにしてくれたものだったことを話した。

けれど、春雪の本当に愛した人の話だけはしなかった。

紅は私が家族から受けていた仕打ちを聞きながら、私を抱きしめ、一緒に泣いてくれた。

ずっと、ずっと寂しかった。

愛して欲しかった。

そばにいて欲しかった。