だって君を救うには僕が家族になって君を守っていくしかない、と思ったからね」

春雪…。

私のこと、守るために、好きでもない相手と婚約なんかしたの?

私なんかの、ために。

自分の人生を棒に振るようなものじゃない。

馬鹿だよ、春雪は馬鹿だ。

私は流れる涙を押さえきれず、春雪に、

「先生、本当はハルユキなんかじゃないんでしょ。シュンセツなんでしょ」

春雪はゆっくりうなずいた。

「君のことも、ちゃんと覚えているよ。俺がアキを亡くして、辛かった時期に、君は光をくれた。俺の励みになってくれた。だから今度は俺が守るしかない、そう思った」
私は春雪に抱きついた。
春雪、辛かったね。

私もその痛み、すごくわかるよ。

親から愛してもらえない子供がどれだけ苦しいか。

どれだけ孤独か。

ずっと、ずっと抱えてきたんだね。

私たちは似たもの同士だったんだ。


私と春雪は抱き合っていた体をそっと離し、唇を重ねた。

春雪の柔らかい唇に涙の雫がついていて、しょっぱいキスだった。

「いろは、これからは俺が守るから」

私は泣きながらうなずいた。

やっと、気持ちが通じ合ったね。

ずっと、待っていたよ。