俺は通っていた予備校を
辞めて、バイトをしなが
らアキに仕送りをしてい
た。出産費用のためにね。

でも、アキはもともと体
が弱かったから、出産に
耐えられなかったんだ。
子供と一緒に、天国に逝
ってしまった」

春雪の言葉は後半部分が涙声になっていた。

外人のように茶色い目を真っ赤に染めて。

「俺、守れなかった。アキを守れなかったんだ…」

「先生…」

「そのショックで俺は記憶を失った。その前後の記憶をね。今話したのはアキがつけていた日記を読んでわかったんだ」

「そう、なんだ」

春雪は鼻をずずっとすすりながら、

「そして、それでも立ち直ろうと、大学に入った。

なんとか浪人はせずに済んだ。そこで君のお姉ちゃんにあった。

君のお姉ちゃんはいつも君のことをけなしてばかりいた。

親にも見離されてるのよ、なんて笑いながら言った。

僕は内心、ひどい怒りを覚えた。

ネグレクトにあう子供の気持ちを知らないくせに、ってね。

でも、将来に絶望していた僕は、結婚に対して何の希望もなかった。

だけど、そんな僕でもできるなら君を救ってやりたいと思った。

だから僕は君のお姉さんにプロポーズをすることにした。