春雪はどんどん、高台に登っていく。

そして、少し豪奢な感じの墓石の前に立った。

「ついたよ」

私はその墓の前に立った。

「井上家之墓」

墓石にはそう彫られていた。

「ちょっと、こっちに来て」

春雪は私の腕を引き、墓石の脇に連れて行った。
そこには亡くなった人たちの名前と年齢、亡くなった年月日が彫られていた。

一つ一つ、見ていくと、おや、と思った。


《井上亜紀 享年18歳

200X年4月21日没》

井上、アキ?

年齢からいくと、生きていたら春雪と同じ年齢のようだった。

「先生、このアキさん、って誰?先生の兄妹?」
すると、春雪は悲しそうに笑い、

「ああ、俺の双子の妹。そして、俺が世界で一番愛した人」

えっ…?

どういう、こと?

兄妹なんでしょ?

愛し合う、って兄妹で?
春雪の指がアキさんの文字をなぞった。

その指は小刻みに震えていた。