今は、先生になっちゃったけど、私を救ってくれた、大切な人。

涙がこぼれてきた。

春雪、春雪。

なんでこんなに愛おしいのに、そばで見ていることしか、私にはできないの?

誰よりも先に私たちは出会ったのに。

こんなに苦しいなら、遠く離れて、思い出すこともないほうが、断然幸せだったのに。

でもあなたは私の前に現れた。

悲しいほど、いろんなものを背負って。


「…んー…」

春雪が動いた。

そして目をかゆそうにこすると、

「アキ…?」

とつぶやいた。

透き通るような笑みを浮かべていた。

私は全身が凍るような気持ちだった。

アキ、ってあきは姉ちゃんのことだよね?

あきは姉ちゃんの前ではそんなに素敵な笑顔を見せるの?

違うよ、春雪。

私はいろは。

あきは姉ちゃんじゃないんだよ。


私は目を押さえながら、春雪が覚醒する前にそばを離れて、駆け出した。