母親も同調して笑う。

春雪はニコニコ笑いながら、

「いろはさんは素直ないい子ですよ」

春雪…味方してくれるんだ。

「今度学級委員長に選ばれましたしね」

春雪は、「なっ」と私に向かって同意を求めた。
私は、黙って頭をこくっと縦に振った。

「うそっ、いろはが?」
かずは姉ちゃんが馬鹿にしたように言う。

早くこんな苦しい食事の時間が終わればいいのに。

私は食事を先に済ませると、

「私、宿題が残ってるから」

と席を立った。


階段を泣きながら上がっていると、後ろから手を引っ張られた。

誰?もう放っておいてよ。

私は苛立ち気味に振り返る。

「いろは、さんだったよね、名前」

春雪は私の手をぎゅっと握りながら問いかけた。
私はますます涙がこみ上げてきた。

お願い、春雪。

私のことを思いだしてよ。

ずっと、ずっと大好きだった、私だけの春雪。

「家族の言うことなんて気にするんじゃない。君はちゃんと価値ある人間なんだから」

「先生…」

私は抱きつきたい気持ちだった。

子供の頃のように春雪に飛びついて、頭をくしゃくしゃにして欲しい。

でもその気持ちはぎゅっとこらえた。