ただ、あの人の残していってくれた優しさだけはいつも胸の中にあった。
今でも時々思い出す。

あの人がいなかったら、私は今、どうなっていただろう?


電車は混んでいたけれど、私と紅はかまわずメイクの続きをした。

周りの人はみんな、迷惑そうに私と紅を見ている。

気になんかならない。

誰だってやってることだもん。

時々、お尻の辺りに変な感触がしたけれど、睨み返した。

痴漢する男って、ほんとサイテー。

あーあ、この世界にはかっこいい男の人ってなかなかいないんだなぁ。