お父さんが、死んじゃう。

お父さんが、いなくなる。

お父さんが…。

私は涙が溢れるのも気にせず、その場から駆け出した。

一刻も早く、こんな地獄のようなところから逃れたかった。


お母さんが春雪に知らせるな、といった意味がようやくわかった。

体裁を気にする人だから、夫が倒れたことなんて、たとえ娘の婚約者でもいいたくなかったのだろう。

そんなに体裁を気にしているあなたは、裸の王様だ、っていうことに気づいていますか。

少なくとも、私はあなたを、軽蔑します。

一生かかっても、きっと分かり合えない。

悲しくもない。

寂しくもない。

私はただ、静かに、目を閉じた。