私はその言葉を聞いて、目から涙がぽろぽろとこぼれてきた。

お父さん。

ずっと気づいていてくれたんだね。

私がずっと、ずっと愛情を求めていたことを。

お母さんに愛されたかった。

お父さんに色んなところに連れて行って欲しかった。

あきは姉ちゃんに勉強を教えてもらいたかった。
かずは姉ちゃんと買い物に行きたかった。

普通の家族みたいに、仲良くしたかった。


でもお父さん。

どうして今まで私を助けてくれなかったのですか?


一度家族に抱いた不信感はそう簡単には拭えなくて。

父親の優しい言葉も信じられずに疑っている自分が少し悲しかった。

お父さん、お母さん。

私は何度あなたたちの子供として生まれたことを後悔したかわかりません。

でも、いつか愛されることを願ってやまなかった。

だけど、もう、限界みたい。

私は静かに父親の元から離れると、お母さんとお姉ちゃんたちの顔を順繰り見ながら、言った。

「お母さん、お父さん、お姉ちゃんたち。私はもうこの家族と一緒に暮らしていく自信はありません。それはみんなも同じ気持ちなのだと思う。だから、私、家を出ます。一人で暮らしていきます」