でも現実はシビアで。

ベッドの中で私の携帯電話が震えた。

誰だろう、と見ると、母親の携帯電話の番号が表示されていた。

珍しいな、私の携帯にかけてくるなんて。

私は静かに通話ボタンを押した。

「もしもし」

「あ、いろは。今、どこにいるの」

「どこって、家だけど」
「とにかく大変なことが起きたのよ」

「何、大変なこと、って。それに、お母さん、今どこ」

「病院、病院の待合室」
「は?何でそんなところにいるの」

「いいから今から病院の住所と名前を言うから早く来なさいよ」

「早く来なさい、って。外すごい雨じゃない」

「親に口答えするんじゃないわよ。雨ぐらい、なんだっていうの」

私が雷を苦手なことを知っているはずなのに、どうしてこんなときに呼び出すんだろう。

もう親の身勝手さに呆れて、反抗する気にもなれなかった。

「わかった、行くから」
「あ、それと、ハルユキ君には絶対に知らせたらだめよ」

「は、何で」

「いいから。じゃあきるわよ」

そういうと電話はぶつっと切れた。

何故だか胸がざわざわとざわめいて、私は急いで服を着た。