でもそれは目が覚めれば消えてしまう幻で。

起きたときにいつも涙を流していた。

でも、今は、本当に愛する人のそばにいる。

そして、ずっと願ってきた、愛する人と結ばれるのだ。

そんな想いが頭をめぐって、涙が止まらなかった。

春雪は優しく私の髪を撫でながら私の部屋の扉を開けた。

心臓がどきどきして、私はその音が春雪に聞こえてしまうんじゃないか、って少し心配になった。
春雪が私をゆっくりとベッドの上におろした。

私はベッドに横たわりながら涙の止まらない目を閉じた。


「いろは、愛してるよ…」


何度も何度も春雪は私の耳元でささやいた。

少し息の上がった春雪と初めて一つになった瞬間、私の脳裏を色々な想いがよぎった。

ずっと、こうしていたい。

春雪の胸の中でずっと抱かれていたい。

心臓の鼓動の音や、温かいぬくもり。

その全てが愛おしくて。
私は春雪に自分の身を任せた。

ベッドに並んで横たわりながら、私は春雪の手をぎゅっと握っていた。

春雪は少し栗色をした柔らかな髪を手で払いながら、眠たそうに目をこすった。

私は春雪の寝顔を見られたことが嬉しくて。

ずっと見ていたいと思った。