春雪は私の体をぎゅぅっと抱きしめると、

「さ、中に入ろう。このままじゃいろはまでずぶぬれになっちゃうからな」

春雪は私を抱き上げると、後ろ手で玄関の扉を閉めた。

春雪の腕の中は温かくて、いい匂いがした。

私は春雪の濡れた髪に触れると、そっと額に唇をつけた。

「いろは、やっと帰ってきたんだな」

「うん、本当はずっとハルに会いたかった。真咲さんの家にいる間もずっとハルのこと思ってたよ」

「俺も、ずっと待ってた。帰ってきたら、真っ先に抱きしめてやりたい、って思ってた」

春雪は私を抱きかかえたまま、私の唇に自分の唇を重ねた。

雨の雫が冷たかった。

でもなんだかとても安心して、涙がまた溢れてきた。

「ハル」

「うん?」

「あのね、お願いがあるの」

「お願い?」

「うん、真咲さんの家にいるときからずっと思ってたことなんだ」

「俺にできることなら、何でもしてやるよ」

私は春雪の首に自分の腕を回し、

「私、ハルと一つになりたい」

春雪は黙っている。