四角く切り取られた窓から見える空は限りない闇で。

私は恐怖でずっと春雪の名前を呼び続けた。

ハル、ハル、ハル。

怖いよ、早く、来て。

私が涙と鼻水を腕で拭いながら、布団の中で丸まっていると、玄関のドアを激しく叩く音が聞こえた。

ハルだ。

私は直感でそう思った。
布団の中から飛び出し、階段を駆け下りる。

玄関へ直行した。

ドンドンドン。

激しく打ち鳴らす音が雷と一緒に黒い空に吸い込まれていく。

私は急いでドアを開けた。

「いろはっ!」

私が春雪に抱きつくのと春雪が私の名前を呼ぶのは同時だった。

「ハル…」

私は泣きじゃくりながら春雪の胸に顔をうずめた。

「ハル、ハル、ハル。怖かったよぉー!!!!」
春雪はずぶぬれのまま私を抱きしめた。

玄関先には春雪が差してきた傘が開いたまま転がっている。

「ハル、車で来たんじゃないの?」

「ああ、車で途中まできたんだけど、この近所に止めておくと、俺が来たことがばれちゃうだろ」
「うん」

「だから途中の公園に乗り捨ててきた」

私は春雪の背中に腕を回して、自分のほうへ引き寄せた。