涙声だし、鼻水も出てきて、もしもしがもひもひになってしまった。

ぐすぐす鼻を鳴らしていると、電話の向こうで、あの声がした。

「いろは?」

そう、私の大好きな、愛しい人の声。

柔らかくて、全てを包んでくれる、愛する春雪の声だった。

「ハル…」

「いろは、大丈夫か!?あまりに雷がひどいから電話してみたんだけど」

「ハル、怖いよ。私、雷苦手なの…」

「お母さんとお父さんは」

「私以外の4人は舞台見に行っちゃって、留守なの」

「くそっ、なんでいろはだけを置いて…」

春雪が珍しく声を荒げたので、私は少し驚いてしまった。

「じゃあ、今は誰も家にいないのか」

「…怖いよ、ハル。助けてよ…」

「わかった。今からいろはの家に行くから。静かに毛布でもかぶって待ってて」

私は受話器の前で何度も頭を縦に振った。

こくっ、こくっ。

頭が振れるたび、涙が溢れた。

ハル、やっぱりハルは優しいね。

私が辛いときはいつも気づいて手を差し伸べてくれる。

「じゃあ、電話切るから。急いで駆けつける」

「ん…」

電話がぷつっと切れた。

雷鳴は暗闇の間を光とともに切り裂いていく。