その日から、旭先生は塾の生徒達の注目の的となった。
大学生。
オシャレ。
整った顔と容姿。
これを、気にしない女子はいないでしょう。
「旭先生♡ここ教えてください♡」
「私も私もっ」
ってな感じでいつも女子達に囲まれてる。
「質問は授業内。俺も次の授業あるんだけどな」
よしっ、よく言った!
「そこをなんとか〜。私達先生のおかげで勉強やる気になってるの♡一問だけお願い♡」
「...仕方ないなぁ、一問だけね」
え、ちょっとぉー!!
教室の扉にかじり付いて見てることしかできない美加子である。
上級生だから、何も言えないし...!
あんな調子じゃ美加子話せないじゃん!
...せっかく今日、先生の授業あるからオシャレしてきたのに。
「あ、次の生徒来たからここまで」
「え、まだ途中〜」
「後は別の先生に聞いて」
旭先生は、上級生の女子達の輪から離れて私の元へ歩いてきた。
「小林さん。そんなとこで何やってんの?早く入んなよ」
先生はちょっと笑った。
上級生にはちょっと睨まれたけど、美加子が1番最初に見つけたんだから。
たとえ喋ることが出来なくても
質問出来なくても
ここに来れば、会えるから。
今はそれだけでいい。
もし、旭先生が美加子の学校の先生とかだったら毎日会えるのになぁ。
いや、ダメだ。
学校の先生になったらもっと人気者になっちゃって美加子が近づけなくなる。
そんな事を考えながらトボトボと登校してたら、前を歩く美月。
声をかけようかと思ったけど隣に彰人君がいたからやめた。
2人で登校...?
ではないか。その前に羽崎さんと上野君がいる。あの2人付き合い始めたんだっけ?
それに乗って、美月も彰人君と...♡?
なんて、気が早いかなぁ。
「美加子」
横から呼び止められて、見ると、見たくない顔が。
春休み、美加子の事を重いと言って振ったあげく、駅に置いていった男。
「話があるんだけど。ちょっといい?」