「咲宮」

立ち上がって、先生と目があったので挨拶をしようと思ったら先に呼ばれた。


「はい」

「お前、今日この後暇か?」

「いや、もう帰ろうかなーと」


夏葉も待ってるだろうし。


「何か用事があるのか?」

え、なんなの?
私が不審に思って後退した時だった。


「先生、そんな言い方だと気持ち悪いっていうか怪しいって」



近くにいたのか、先生の肩をポンと叩きながら『ねぇ?』と同意を求めるようにそう言ったのは、折原君だった。



「お前、今さりげなく気持ち悪いって」

「あ、何でもないから咲宮さん帰って大丈夫だよ」


折原君は手を挙げる。


「いやぁ、でもなぁ。お前一人に任せるのも気がひけるっていうか」

「んなのいつものことじゃないっすか」


私が分からない話をしてるんだろうけど
どうやら折原君と先生は仲が良いみたいに見えた。


「あの、何かあるなら言ってください、気になります」

先生は待ってましたという表情になった気がした。


「明日入学式があるだろ。それで保護者に配布する冊子を作るのを手伝ってほしいんだ」


そっか、明日は土曜日だけど入学式か。
私達は休みだけど先生達は学校か。



「折原と2人で頼まれてくれないか?咲宮よ」

先生は手の前でお願いのポーズをする。

折原君は私を見て首を横に振る。
その顔は『断っていいよ』って言ってる気がした。



「美月ー!かえろー!」

「彰人〜、って二人共いんじゃん」


私が何を言えばいいか迷ってたら近くのドアから夏葉と伶太君が顔を出した。

夏葉は私を、伶太君は折原君を迎えに来たみたいだ。


「伶太ごめん、今日先生の雑用あるから先帰ってて」


今度は折原君が両手を顔の前で合わせてごめんのポーズをした。


その一瞬で私の頭の中に1つのひらめきが湧いたのだ。