「ごめん、夏葉。私も手伝うから先帰って。あ、ちょうどよかった。伶太君、夏葉と一緒に帰ってあげて?」
「ええっ!?」
夏葉は驚いたのか声を上げる。
「あ、じゃあ帰るか羽崎」
「え、あ、うんっ...」
照れた夏葉に私は笑顔で手を振って、2人は廊下を歩いて行った。
その2人の背中を見送って
よしっ!
私は思わずガッツポーズをした。
そうしたからには私は帰れないよね。
「先生、手伝います」
「お、そうか!じゃあよろしくな!」
そこから冊子の作り方を軽く説明されて先生は『終わったら職員室に持ってきてくれ』と言って教室から出て行った。
冊子はA4サイズ5枚構成。左側を二箇所ホチキスで留めるという単純作業だ。
2人ならすぐ終わりそう。
机をくっつけて向かい合って座って作業がスタートした。
「咲宮さんなかなかやるね。あの2人を自然に一緒に帰らせるなんて」
そう。私のひらめきはそれだった。
「伶太君、普段部活で夏葉と帰る時間違うから、一緒に帰れるのってこーゆう日しかないと思って」
折原君は『そっかぁ』と笑ってプリントをホチキスで止めていく。
「手伝ってくれてありがとね」
「いえ...折原君はいつも先生の手伝いやってるの?」
「あーうん。健二は部活の顧問でもあるし。よく頼まれるんだ」
健二...?先生の前じゃないとこでは呼び捨てなのかな?