異世界3日目から一週間ほど、
恐ろしく何事もなく過ごした。

この人間と、異世界人が混合した街で
何事もなく。



「どうしよう…。」

キリカは悩んでいた。

何事もなく普通に過ごしていたはずが、



「がうぅ…」



「ここ…どこっ!!!で、
誰っなんだ!!!!」



朝起きると、部屋ではなくそして目の前に
いるのはアストラスではなくて、

「がうっ!」


なんだか言葉が通じなさそうな
獣の姿をした私と同じ歳ぐらいの男の子が一人。



「…えーっと貴方は?…」

苦笑いをしつつ男の子に話しかけた。


「がぅ?がっ!」


ヤバイです…。言葉が通じません
キリカピンチっす…。


しかも布団はかぶっているものの
下は草だ。
格好も寝巻きのままだ。


「…困ったな…」





何事もなく異世界生活に慣れてきたと思ったが、やはり現実ではありえないことが
この世界では日常なのだろう。



「がううう」


相手の男の子も私が困った顔をすると、
困った顔をする。



「がうっ…!」



なんだか可愛かったので、癖の強い
深紅色の髪をなでた。



すると、男の子は嬉しかったのか
私に…頬をすり寄せてきた…!


「えっ…ちょっと…くすぐったいよっ」


首に癖毛が擦れてくすぐったい、
本当見た目は獣だが、中身は人懐っこい
犬のようだ。



そして私から離れたと思えば、


「がぁう…やっぱり…生きてた…!」


「えっ?いま…」


話した?話せないと思っていた…。
カタコトだけど、確かに言葉を話した。



「アイリアスっ…!!」



ギュッと抱きしめられ、
再び深紅色の髪が頬に触れた。






?…アイリアスって??


私の名前じゃない…?