だから、私も一言言ったの。でもそうしたら、引っ込んでろって言われて…。そこからはお互いに怒鳴り合うだけの、建設性なんてゼロの言い争いだった。

その時にね、インターホンが鳴ったの。

『誰だ、こんな時に…』

家に来たのは雪月ちゃんだったの。だから天保さんの姿を見て、かなり驚いたと思う。何せ雪月ちゃんにとっては、天保さんはただの理事長だからね。

『あの、一夜に用事があって…』
『今は取り込み中だ』
『…一夜、何かやったんですか? 理事長先生が家にまで来るなんて…』
『君には関係のないことだ』
『でも…』
『首を突っ込むな!』

ビンタの音が、私にも聞こえた。…天保さん、脱サラして教員になったからね。サラリーマン時代の厳しい上司からの言葉が染み付いてて、生徒にもその言葉を言うようになったんだって。でも、雪月ちゃんにはかなりこたえたみたいで…。

気づいたら、我慢ならなくなって、雪月ちゃんの近くに駆け寄ってた。

『大丈夫、雪月ちゃん!?』
『あっ…』
『…気にしてくれてありがとね。だけど、雪月ちゃんを巻き込みそうで怖いの』
『巻き込むって…?』
『雪月』

一夜は、雪月ちゃんの頭を優しく撫でてた。

『一夜…』
『悪いことは何もしてないし、これから悪いようにもならない。もうちょっと待ってろ。絶対、戻るから』
『…何言ってるの、一夜…?』

これ以降は、日向ちゃんが窓から見てた通りよ」