それから、一週間ほど時が過ぎた。

「先生、さっき体育でサッカーやってて、その時に他の奴とぶつかって…」
「どこ?」

体操服を着た男子生徒が、ひじを私に見せる。赤黒く変色したそれは、生徒の顔よりも痛みを如実に表していた。

「とりあえず、そこに座っておいてもらえる? ガーゼとか持ってくるから」

棚からガーゼを取り出そうとすると、奥で何やら作業をしている鴫城先輩が話しかけてきた。

「もうすっかり板についてきたわね、養護教員の仕事」
「いえいえ、先輩と比べたらまだまだですよ」

ガーゼと包帯、それに消毒液を持って、さっきの子の所に戻る。

「ちょっとしみると思うけど、我慢してね」
「はい」

消毒液をガーゼに少し染み込ませ、傷口に当てる。

「痛っ…」
「ゴ、ゴメン、痛かった?」
「先生がおっしゃったんじゃないですか、しみるかもって。何で先生が謝ってるんですか」

まだまだだな、と再三感じつつ、ガーゼを包帯で傷口に固定する。

「これでもう大丈夫だと思うから。…あ、次の授業そろそろ始まっちゃうよ」
「はい、ありがとうございました」

少しずつながらも、養護教員らしい仕事はできるようになってきていた。

「そういえば鴫城先輩、さっき何してたんですか?」
「そろそろ第一回の保健委員会だからね。色々と準備しておくものがあるの。…そうだ、手伝ってくれない? これ、コピーして欲しいんだけど」
「はい」

…そうか、確か保健委員会とかどうとか、そんな話をこの前先輩達がしてたっけ…。