「まさか駅まで一緒だなんてね…」
「本当、普通に近所の友達と帰ってるみたいな感じです」
「私も。大学時代とあんまり変わらないかも」
「へ~、大学ってこんな感じなんですね~…」

他愛もない話をしながら、気づけば私の家の前に来ていた。

「じゃあ、私の家ここだから。また明日」
「…え?」
「ん? 鴫城くん、何かあった?」
「…いや、俺の家、これなんですけど…」

そう言って鴫城くんが指さしたのは…私の家の、隣。

「…本気で言ってる?」
「先生こそ、本当にそこなんですか?」
「教師が嘘をついちゃダメでしょ。…ほら、ちゃんと表札に『鷹夏』って書いてるでしょ?」

引っ越してまだ間もないため、ほとんど汚れていない表札。そこにはちゃんと「鷹夏」の文字が書かれている。

「…ってことは、私も先生のご近所さんってことになりますよね?」
「まさか鶴花さんも…」
「はい。一夜の家の斜め前なので…先生の家のお向かいさんってことになりますね」

…これから二、三週間は、恐らく何が起きても驚かないだろう…。

「何の偶然だろうね、これ…」
「さぁ…」
「さぁ…」

二人が同時に首をひねる。

「…そ、そうだ、私これから用事あるんだった! じゃあね、また明日」

逃げるように玄関のドアを開け、すぐさま閉める

これ以上あの場にいたら、頭が沸騰すること間違いなしだ…。