「鷹夏先生って、あんまり先生って感じしませんよね」

電車の中で鶴花さんが言う。帰りの電車はどうやら同じらしい。

「そう?」
「どっちかっていうと学生なんすよね…」
「あ、確かに分かるかも」

二人が私の方を見る。

「…しょうがないでしょ、私まだ社会人一年目だから…」
「なるほど、だからカワイイんですね」
「…というと?」
「さっきから一夜の鼻の下が伸びてるんですよ」
「は!? 何言ってんだよ、雪月!」

電車の中だけど、鴫城くんの声が大きくなる。

「ちょっと、一夜。声大きい」

私が注意するよりも先に、鶴花さんが注意する。…もしかしたら、いや、多分、私より鶴花さんの方がしっかりしてるかも…。

「間もなく~、雉谷~、雉谷~」

鼻にかかったようなあの特徴的なアナウンスが、揺れながら走る車内に反響する。

「あ、そろそろ降りないと…」

上の棚に置いていたカバンを取った所で、鴫城くんが驚いたような声をあげた。

「先生、ここなんですか?」
「うん、そうだけど…」

鴫城くんと鶴花さんが顔を見合わせる。

「俺達も…」
「だよね…?」

つくづく、奇跡的な確率に驚かされる。