始業式は午前中で終わり、養護教員を除く教員以外は帰る時間となった。

「私、ちょっと用事があるから。日向ちゃん、先に帰ってて」
「はい。お疲れさまでした」

カバンを手に持ち、校舎の外に出て靴を履く。生徒の皆が和気あいあいと帰る様子をこうした目線で見るのが、とても新鮮だった。

「…ふぅ…」

緊張のせいか、今日はやたらと肩が凝ってしまった。早く家に帰ってゆっくりしようか、と思っていると…。

「あれ? 鷹夏先生?」

後ろで、私の名前を呼ぶ声がした。見ると、そこには鴫城くんと鶴花さんがいた。

「先生、もうお帰りになるんですか?」

鶴花さんが尋ねる。

「うん。養護教員って、他の先生方とはちょっと違うから。治外法権、っていうの? 保健室のことは、私達が一任されてるの」
「へ~…」
「二人とも、今から帰るの?」
「はい」

と、いうわけで、私達三人は一緒に帰ることになった。

「新学期初日に保健室行くことになるとか、思ってもみませんでしたよ…」
「一夜なら多分そうなるだろうなって思ってたけどね」
「あ? どういうことだ、それ?」
「別に~」

保健室では親の前ということもあってあまり話せなかったのだろう。帰り道では、さっきまでとはまるで違う鴫城くんがいた。

「ふふっ、仲いいんだね、二人とも」
「別によくなんかないです!」
「別によくなんかないです!」

二人の声が見事にシンクロする。…なるほど、二人はとても仲がいいようだ。