その時だった。

「失礼しま~す」
「失礼します」

ノックの後にドアが開き、そして一夜くんと鶴花さんが入って来た。

「どうしたの、一夜?」
「保健だよりの編集後記。昨日やっと書けたから、持ってきた」
「すみません、締め切りギリギリになっちゃって…。先生、どこに置いてたらいいですか?」
「そうね…。日向ちゃん、悪いんだけど、ちょっと編集後記持っててもらえない?」
「あ、分かりました…」

鶴花さんのを受け取り、そして一夜くんのを受け取る。その時に、一夜くんの手に、私の手が触れた。

「あっ…」

昨日と同じように、胸が締め付けられる。

「…先生、どうしたんですか?」
「日向ちゃん?」

固まってしまって、動かない。一夜くんも、私の手が触れたのに驚いたのか固まっていた。

「お~い、お二人さ~ん…?」

先輩の手が私の顔と一夜くんの顔の間で振られたことで、私はようやく正気に戻った。

「あっ、すみません…」
「どうしたの? 二人とも見つめ合っちゃって」
「まさか一夜、先生のこと好きなの?」
「馬鹿か、そんなわけないだろ! …ですよね、日向先生」

…言ってしまった…。

空気が凍りつく。

一夜くんは、たった今禁句を口にしてしまった…。