養護教員になるのは、小さい頃からの夢だった。だから、もし私に何もなければ、何のためらいもなく戻っていただろう。

だけど…今の私には、一夜くんと、玉生がいた。特に玉生は、まだ産まれて日の浅いか弱い存在だ。今はまだ一夜くんがいるから大丈夫だけど、あっという間に一夜くんも新社会人となり、どこかへ働きに行かなくちゃいけなくなる。そうなると玉生を幼稚園に預けなきゃいけないわけだけど、迎えに行けるかどうかも微妙だ。…養護教員という、若い命を守る職業だからこその迷いなのかもしれなかった。

「ママ、よーごきょーいんってなーに?」

私の腕の中で、玉生が問いかける。

「う~んと、養護教員っていうのはね、玉生ちゃんみたいな子供が具合を悪くした時に、その子達の具合をよくする人のことなの」
「…ママはびょーいんのせんせーってこと?」
「病院の先生じゃなくて、学校とか幼稚園の先生なの」
「あっ、よーちえん…」

玉生が言葉を濁らせる。

「ん? どうしたの?」
「よーちえんって、たのしーところなんでしょ? おばーちゃんがいってた」

私が目を合わせると、お義母さんは肩を少し上げて微笑んだ。

「たまき、よーちえんいきたい!」
「えっ?」
「たのしーところ、いきたい!」
「…でも、その間はパパとママに会えないんだよ? お友達とか先生とかいっぱいいるけど、おうちに帰らなきゃいけなくなるし…その時に、パパもママも来れないかもしれないよ?」
「おじーちゃんもおばーちゃんもいるからいいもん!」

…そうだ。…玉生の家族は、一夜くんと私だけじゃない。ここにいる皆が家族なんだ。それでも少し不安になってお義母さんの方をもう一度見ると、今度はお義母さんは言葉で答えてくれた。

「まぁ、もともと私一人で回してたからね。時間になったら迎えに行って全然いいわよ。どうしても無理な時があったとしても、一人くらい空いてる人がいるでしょ」