「…ん…」

そしてちょうどその時、双生くんの背中で、玉生が目を覚ました。

「あれ…ママ…?」

心配そうな顔で、玉生は双生くんの顔の左右から私を探していた。

「あっ、ママ~!」

そして玉生は私を見つけると、手を精いっぱい伸ばして私に甘えた。そんな玉生を、私はぎゅっと抱きしめる。

「はいはい、玉生ちゃんは甘えんぼうなんだから~」
「…そろそろちゃん付けじゃなくてもいいんじゃないか、日向? もう三歳だし…」

一夜くんが少し呆れる。

「分かってないな~…」

口ではそう言った私だったが、果たしていつ頃「玉生ちゃん」が「玉生」になるのか、それは私も分かってなかった。

「…そうだ、日向さん」

理事長…じゃなくてお義父さんの低い声に、私の耳がフォーカスする。家族には敬語は使わないんだと思っていたけど、私には相変わらず敬語だった。

「何ですか、お義父さん?」
「いつ頃戻るんですか?」
「戻るって?」
「決まってるじゃないですか。烏間高校の養護教員に、そろそろ戻りませんか?」

その言葉を聞いて私が一番最初に取った行動は、「迷う」ということだった。