「日向?」
「日向ちゃん? どうしたの?」
「大丈夫?」
「何かあったんですか?」

痛みはどんどん程度を増してくる。質問に答えるのにも、幾分かの労力を費やしそうだった。

「…痛い…」
「痛い?」
「お腹が…痛い…!」
「…まさか…」

私の体の中で起こっていることに一番早く気づいたのは、先輩だった。

「ちょっとゴメンね」

私の足の付け根に手を当てた先輩は、少し冷や汗をかいていた。

「…もうすぐ産まれるわね…あと十分くらいかしら…」
「…は?」
「あと十分って…」
「さっきまで何もなかったのに?」
「でも、もうかなり出てこようとしてるの。すぐに頭が見えてくると思うわ。…手伝って」

横向きに倒れている私を仰向けにしながら、先輩は三人に指示を出した。

「双生、タオル持ってきて! できるだけ多く!」
「了解!」
「天保さん、救急車お願いします。何が起こるか分かりませんし」
「分かった」
「一夜!」

一夜くんの名前を呼んだ瞬間、先輩が口をつぐんだ。

「どうしたんだよ? …まさか、日向に何かあったってことじゃないだろうな?」

そうじゃないって言ってあげたかったけど、お腹と、それに加えて股関節まで痛くなってきたからそんな余裕もなかった。この時、私の足は限界まで広げられていたのである。