クラッカーの代わりに、私達は惜しみない拍手を送った。

「だから祝われることでもないんだって…」
「ノリ悪いわね、一夜…」
「まあ、こういう年頃なんじゃない? 僕だってこういうの面倒だって、ちょっと前まで思ってたから」
「祝われるだけありがたいことなんだぞ? 私の頃は…」
「だから時代が古いんだって…」

…でも、もし一夜くんと私が結婚したら、ささやかでもいいから、こういうお祝いをしてみたい。だから、一夜くんがこういう年頃なだけだということを、心のどこかで願っていた。

「それにしても、今日の料理すごいわね~」
「これ、一人で作ったの?」
「そんなわけないじゃん、鵜児くん。先輩にも手伝ってもらったし、鵜児くんだって買い物に行ってくれたじゃん」
「買い物が手伝いに入るかは微妙ですけどね…」
「入りますよ~。こんなお腹じゃ外に出られないから、鵜児くんがいないと作れなかったんですよ?」

私のお腹はみるみる内に膨らみ、いつしかスイカでも入っているんじゃないかというくらいの大きさになっていた。

「…そろそろね…」
「はい。…あっ、また動いた」

お腹の中で、元気に動き回っているのが感じられる。女の子なのにこんなに元気だと、私の手に負えなくなっちゃいそうで、ちょっと心配でもあった。

「ちょっと休む? ずっと準備してくれてたんだから、疲れたでしょ?」
「そうですね…。じゃあ、ちょっとだけ」

ソファに座って一息つこうとした、その時だった。

「…うっ…」
「日向?」

初めてだけど、確かに分かった。

…もうすぐ、産まれる。これは、陣痛だ。