…理事長室に殴り込みをしたその次の日から、一夜くんと私は烏間高校に戻ることができた。

とはいうもののそれなりに長い期間休んでいたので勉強が追いつかないんじゃないか、と危惧する声もあったが、そんな誰かの予想を一夜くんはいい意味で裏切ってくれた。復学して最初の模試で、第一志望だった某名門大学の合格圏内にいたというのだから驚きだ。

…もっとも、そんな一夜くんの学校での活躍を見られたのはごくわずかな期間だけだったけど。

何故なら、戻ってすぐに産休となってしまったからだ。

「何か、日向ちゃんが来る前に戻ったみたいで、逆に新鮮だったわ~」

先輩は以前、そう言って笑っていた。

でも、戻ったわけじゃない。大きく変わったことだってある。

一夜くんや鵜児くんと理事長との確執も消えたし、一夜くんはもう受験生だ。…そして、私だって変わった。

「やっぱり最近の子は料理上手なのね~」
「ちょっとした特技ですから」
「…花嫁修業ってこんなもんなの?」
「う~ん…まぁ、こんなもんなんじゃない? …双生には分からないでしょうけど。ね~、日向ちゃん?」
「そ、そうですね…」

産休に入ってから、私は「花嫁修業」として、鴫城家で暮らすことになった。しかも、ただの鴫城家じゃない。鵜児くんも理事長もいる、本当の鴫城家だ。

そして…三月。今に至る。

「えっと…じゃあ、改めまして…」

クラッカーはもう使っちゃったし、私のドジのせいでサプライズじゃなくなったけど、でもちゃんとお祝いしたかった。

「合格おめでと~!」