「何だよ、全く…」

一夜くんは私達の方を見ると、呆れた顔をした。…無理もない。一夜くんの目に入ったのは、クラッカーの中のカラフルなビニールひもを頭にかぶり、腰が抜けた体勢の私だったのだから。

「ちょっと…大丈夫なの、日向ちゃん?」
「すみません、先輩…」
「ドジだよね、本当に…」
「…鵜児くんに言われたくない! …って言えないけどさ…鵜児くんドジじゃないし…」
「もう出産も近いのに…体は大切にして下さいよ、鷹夏先生?」
「は~い…」

三人が心配する中、右腕が私の前に差し出された。

「大丈夫か、日向?」
「…うん」

こんなドジな姿を見せるのも、もう何度目か分からなかった。だけどそのたびに恥ずかしくて、一夜くんがそのたびに手を差し伸べてくれるから、もっと恥ずかしくなってしまう。

「…で…何だったんだ、一体?」
「あっ、えっと…」
「大学合格おめでと~!」

私がこのサプライズ計画の全てを説明しようとすると、先輩がそう叫んだ。

「…あ~、それか…」

決まり悪そうに首の後ろを掻く一夜くん。

「何よ、もう…ノリ悪いわね…」
「だってそんなに祝うことでもないだろ? ほぼ合格確定の大学だったんだし」
「でも、大学に行けるだけでもすごいことなんだぞ? 私の頃は…」
「時代が違う」
「まあまあ。とにかく、ちょっとサプライズがないと味気ないなって思って」
「…」

一夜くんは何も言わなかったけど、顔は赤く、少しはにかんでいた。