それからしばらく経った、ある日曜日。

「…本当にいいのか?」
「いいって言ってるじゃない。…それとも一夜、怖気づいたの?」
「それほど俺は弱くない」
「まあ、緊張するでしょ、普通は。僕もしてるし」
「…大丈夫か、日向?」
「…うん」

包帯の巻かれた手と手を、胸の前で結ぶ。

「…行こう。私達の場所を取り戻すために」

しばらくぶりに、私達は烏間高校の校門前にいた。そして、一歩を踏み入れた。

日曜日でも、理事長はいるはずだ。

話くらいはできるはず。

それに、理事長は鳩山家の大黒柱として何を見て、何を感じたのか。それを私は知りたかったし、一夜くんも、先輩も、鵜児くんも知りたいはずだ。

「…どうぞ」

理事長室のドアをノックすると、低い声がドアを通した。

「失礼します」

ドアを開け、最初に入ったのは鵜児くんだった。

「…休みだというのに、どうしたんですか、鵜児先生?」
「今日は教師として来たんじゃない。息子として来た」
「…親子の縁は切ったはずだが?」
「じゃあ、元息子として話がある」
「何だ?」

一瞬の間。そして鵜児くんは、語気を強めた。

「一夜をサンドバッグにするのはやめてくれ」