蒼とキスをしてしまった私。

あの唇の感触と意識してしまった思いは、消えることはなかった。

その時、

「結。蒼くんが来てるわよ。」

コンコンッと、お母さんが、私の部屋の扉をノックして、そう言う。

「えっ!?」

私がベッドから、カバッ!と起き上がるのと同時に、カチャリと扉が開き、蒼とお母さんの姿が見えた。

そして、

「結、蒼くんに勉強、教えてもらうんだって?いいことね。よ〜く、教えてもらいなさいよ!!」

そう言い残し、お母さんは扉を閉め、出て行った。

部屋には、私と蒼の二人っきり。

だけどね。

いつ、私が蒼に勉強教えてもらう約束なんかしたのよ?

私は、ジッと警戒した目で、蒼を見つめていた。

すると、蒼は、

「結、キスしたこと、怒ってるか?」

心底、済まなさそうな顔で、そう言い、私を見つめてきた。

「蒼、ズルいよ。そんな顔されたら、もう怒れないじゃない。」

「じゃあ、もう怒ってないのか?」

「うん。」

私がそう言うと、ゆっくりと蒼は、私のベッドまできた。

そして、ベッドに座っていた私を押し倒すと、
覆い被さってきた。

私は、びっくりして、

「蒼。ちょっ、ちょっと、何するのよ?」

私はそう言って、蒼から逃れようとするが、両手首を、ガッチリと掴まれていて、身動きできない。

「結。」

蒼は、私の名前を呼ぶと、口づけをしてきた。

なぜか、私は、抵抗することなく、蒼からのキスを受け入れていた。

「‥んっ‥‥。」

そして、それが、深い口づけに変わる。

「っ。ふっ‥‥んっ。」

私は、その蒼の思わぬ意外な優しい口づけに、なすがままにされていた。

ドキンッ!ドキンッ!ドキンッ!ドキンッ!

また、ワケの分からない胸の高鳴り。

大好きな高ちゃんの顔さえ、浮かんでこないほど、今、私は、蒼のことだけ考えてしまっている。

そして、口づけが終わり、私と蒼の唇が離れると、蒼は私を意地悪く見つめたまま、言った。

「どう?結、よかった?」

そのイジワルな言葉を聞いた途端、私は、顔が真っ赤になったのを感じた。

だが、それはもう、蒼が聞いてきたことを『肯定』しているものと同じ。

すると、蒼は、さらに意地悪く笑うと、私の耳元で、とんでもないことを囁いた。

「この続き、やる?」

私は、その蒼のセリフに、顔中、真っ赤になっていく。

「っ!!」

すると、蒼はイジワルな微笑みを浮かべた。

「結。顔が真っ赤だぞ?」

「当たり前でしょう?あんなこと、言われたのに‥‥‥。大体、蒼はどうして、私にこんなことするの?」

「分からない?」

蒼は、さらにイジワルく、微笑んで、そう聞いてきた。

「分からないから、聞いてるんでしょう!?」

すると、

「鈍感。」

蒼は、そんなことを言う。

「鈍感って‥‥‥。」

私は、さらにワケが分からない。

顔に?マークをしている私を、蒼は見つめると、逆に聞いてきた。

「じゃあ、結に質問。俺とキスをしてる間、誰のこと、考えてた?」

「えっ!?」

私は、蒼の突然の問いに、答えられずにいた。

だって、私が考えていたのは‥‥‥‥。

高ちゃんではなく、蒼のことだったからだ。

えっ!?

高ちゃんじゃなく、蒼のこと!?

ええええ〜っ!?

私、もしかして、蒼のこと、気になってるの!?

そんな自分の気持ちが信じられず、少し『不安』になった。

そんな私を、蒼はイジワルな笑みを浮かべて、ジッと見つめ続けていた。